LTV(Life Time Value)はマーケティングで重要な指標です。
「顧客1人があなたの会社に生涯でいくらの利益をもたらすか?」
を表したものです。
商売で成功する上で必須の考え方です。
その内容について解説していきます。
最後にメルカリの事例を紹介していますので、ぜひご覧ください。
この記事はハイパワーマーケティングの解説を元にしています。
この本はマーケティングの教科書ともいわれる名著です。
LTVの意味と計算方法
LTVは顧客1人があなたの会社に生涯でいくらの利益をもたらすかという意味です。
次の商品を例に考えてみます。
- 値段:1万円
- 利益:2千円
取引回数が生涯で1回の顧客:LTVは2千円です。
取引回数が生涯で10回の顧客のLTVは2万円です。

LTVは取引単位ではなく、顧客単位に利益を考える方法です。
なぜLTVが必要なのか?
LTVが必要な理由は利益を増やす手段を大幅に増やせるためです。
- 限られた手段しかない会社
- あらゆる手を使ってくる会社
のどちらが有利でしょうか?
いうまでもなく「あらゆる手を使ってくる会社」です。
例えばLTVが2万円とわかっていたら、1万円の商品を初回は半額の5千円で売って新規顧客を獲得するということができます。
1回の取引で考えると3千円の赤字なので、LTVの考えがなければ使えない方法です。
このようにマーケティングにつかえる手段を増やすことができます。
他の方法を次の3つの要素に分解して考えてみます。
取引単位の考え | 顧客単位(LTV)の考え | |
---|---|---|
新規顧客を増やす | 2千円が最大予算 | 2万円が最大予算 ・初回に大幅割引が可能 ・宣伝費をかけられる ・営業に多額のインセンティブを出せる |
取引単価をあげる | ・高額商品を売る | ・オプション購入をすすめる ・サービス契約をする |
取引回数を増やす | ・ポイント割引 ・優良顧客への特別セール |
ビジネスを大きくする方法はたったの3つのみ
ハイパワーマーケティングより意訳
・新規顧客を増やす
・取引単価をあげる
・取引回数を増やす
農業で例えるとLTVは常畑農業で、取引単位の目線は焼畑農業です。
常畑農業は収穫を増やすために肥料を与えたりと長い目で見た関係維持が大切です。
反対に焼き畑農業はその時の収穫が増えればいいという1回限りの関係となります。
顧客との関係性が変わることがLTVの違いです。
LTVと利益の最大化について
注意が必要なのは、高いLTVが必ずしも利益の最大化につながらないことです。
利益 = LTV x 新規顧客
という計算式なので、LTVと新規顧客バランスが大切です。
新規顧客を獲得するにはマーケティング費用がかかるので、LTVが下がります。
次の数値も注意してLTVと新規顧客獲得のバランスをとることが必要です。
- 新規顧客1人を獲得するためにかかる費用
- 見込み客1人を獲得するためにかかる費用
- 見込み客から新規顧客になる確率
- 新規顧客を獲得する費用を引いたLTVを算出
*ハイパワーマーケティングより意訳
LTVの計算式
LTVの基本の計算式はこちらです
1購入当たりの利益 × 年間購入回数 x 平均購入期間
平均購入期間などは出すのが難しいです。
そのためデータに合わせて計算式を変更します。
サブスクリプション契約の場合
サブスクリプションは解約率がはっきりしているので計算しやすいです。
契約期間は 「1/解約率」で求められます。
契約期間を使わない理由は、契約中の人は契約期間を計算できないためです。
期間単位の平均利益 × 契約期間
→ 期間単位の平均利益 / 解約率
サンプル
- 月の利益 :2千円
- 月の解約率: 5%
LTV : 4万円
通販サイトのように顧客と購入金額がわかる場合
1購入あたりの顧客の平均利益 × 平均購入回数
サンプル
- 1購入あたりの利益:2千円
- 平均購入回数 : 10回
LTV = 2千円 x 10回 = 2万円
メルカリ決算で見るLTVの事例分析
メルカリのFY2020.6決算資料をLTVの視点からみてみます。
注意:推測が入っていますので、数字をうのみにしないでください。
LTVの計算
メルカリのLTVの推定:4,500円ぐらい。
800億ぐらいの潜在的な顧客価値を持っていることがわかります。
計算方法1
LTV = 1人当たり利益 / 解約率
= 1,193円 / 27% = 4,417円
計算方法2
LTV = 1人あたり年間売上金額 * 利益率 / 解約率
= 4,035円 * 32% / 27% = 4,782円
- 一人当たり利益
=年間営業利益 / ユーザ数の中央値
=185億 / ((1,745万人 + 1,357万人)/2)
=1,193円 - 1人あたり年間売上金額
= 1人あたりの流通量 x 手数料率
= 6,259億円 / ((1,745万人 + 1,357万人)/2) * 10%
= 4,035円 - 利益率 = 32%
- 1年の解約率 = 27%
*現行利用者数1,745万人と潜在出品者 3,600万人の記述より推定

LTVから見たメルカリの戦略
メルカリのフリーマーケット事業について考えてみます。
決算資料を見ると気になるのは次の3点です。
この点をLTVの視点から考えてみます。
- 巨額の営業損益だが大丈夫か?
- メルカリJPとUSの戦略の違い
- 決算資料でわかるメルカリが注目している指標
巨額の営業損益だが大丈夫か?

-193億円の巨額の営業損益がでています。
反対にUSの利用者人数が222万増えて大幅に増えています。
これを良いとみるか悪いと見るかでUS事業の判断がわかれます。
意味の違う2つの数字なので、普通は比べられません。
ですがLTVを使う事で比較することができます。
メルカリJPのLTVを元にメルカリUSの新規ユーザ222万の潜在顧客価値を計算します。
「100億円相当」
になります。
US事業部の広告費を公表していないのでわかりませんが、広告費が100億以上か未満かが一つの判断ポイントとなります。
LTVを知っている事で、1段階深く物事を判断できることがわかります。
顧客生涯価値の純増額
= メルカリJPのLTV x 新顧客数
= 4,5000円 x 222万人
= 100億円
メルカリJPとUSの戦略の違い

JPは出品強化。USはマーケティング強化している事がわかります。
メルカリJPの立ち上げ時も同じですが、最初に無謀とも思える新規顧客獲得に力をいれて、その後LTVを改善させて収益構造を改善する戦略というのがわかります。
JP:収益改善フェーズ
LTVを向上に力をいれている
- 出品対策強化で取引回数を増やす
- 広告費の比率を下げることで、取引の収益を増やす


US:新規顧客の獲得フェーズ
新規顧客の獲得に力をいれている。
赤字でも多額の広告費を使っている。
LTVを元にした根拠がないと怖くて実施できない方法。

決算資料でわかるメルカリが注目している指標
決算資料で繰り返し出ている指標は、
GMV:取引高の総額
MAU:ユーザ数
です。
これはこの2つが利益の額に大きく関係するこを表しています。
利益 = LTV x 新規顧客
*LTV = GMV * 手数料率(10%) * 営業利益率
また利益を増やす3要素のスライドが決算資料にあります。
- 新規顧客
- 取引単価
- 取引回数

この3つは経営状態を知る上で重要な指標とされている事がわかります。
まとめ
「顧客があなたの会社に生涯でいくら利益をもたらすか?」
がLTVの意味です。
LTVについて知ることで次の2つのことがわかりました。
- 新規顧客を獲得するためにいくらマーケティング費用をかけるべきか?
- 顧客と長期視点で向き合う事の大切さ
またメルカリの決算資料で見ることで、次の2点がわかりました。
- 一段階深く業績を分析できる
- LTVに関係する指標は重視されている
自社の商品のLTVを計算して、マーケティングに役立ててください。
最後にこの記事で参考にしたハイパワーマーケティングの紹介をします。
マーケティングについてのバイブルともいわれるとても有名な本です。
400社のコンサルタントをした経験を元に書かれてますので、具体的なマーケティングのアイディアと実施項目が数多く書かれています。
営業マンに新規顧客の利益を全部あげる事で売上が3倍になった話など、実例が多く書かれています。
LTVだけでなく、他の収益アップの方法の事例が多く書かれています。
収益をあげたいと思った時に実践的で役に立つ本ですので、まだ読んだことがない人はぜひ読んでください